加工食品品質表示基準、生鮮食品品質表示基準等が改正(業者間取引関係)されましたので、農水省のQ&Aを基に、要点を抜粋、要約しました。本年の重要な改正ですので、見落としのないように、しましょう。
従来、業者間取引は、業者間の信頼関係を前提としていることから、商品に関する情報伝達は規格書等により適切に行われていると考えられてきました。しかしながら、平成19年の牛ミンチ事案のように、加工食品の最終製品の製造業者等に表示義務を課すだけで表示の正確性を確保できるという従来の規制では、最終製品の表示の正確性を確保できない場合が生じてきました。 このため、業者間取引における情報伝達をJAS法に基づく品質表示基準の対象とすることにより、不正表示に対する抑止力を高め、最終製品に正しい表示が行われるようにすることを目的として、加工食品品質表示基準等の一部を改正する告示、平成20年1月31日に官報に掲載され、同年4月1日から取引される商品に表示が義務付けられます。 従来、食品衛生法は、業者間取引についても容器・包装された商品に、食品添加物、アレルギー表示、遺伝子組換えや、既に計量法で義務付けられている内容量の表示義務を課しており、原則として義務表示事項は容器・包装に表示する必要がありました。他方、JAS法では原材料も重量の割合の多い順に記載することが義務付けられています。 ここで、業務用加工食品とは、加工食品のうち、一般消費者に販売される形態となっているもの以外のものをいいます。又、業務用生鮮食品とは、生鮮食品のうち、加工食品の原材料となるものをいいます。 例えば、あじの開き干しに使用されるマアジ、○○ハンバーグに使用される牛肉、○○干しぶどうに使用されるぶどう等です。
いっぽう生鮮食品の形態のまま流通し、そのまま一般消費者に販売されるものは、業務用生鮮食品としての表示をするのではなく、従来どおり、加工食品の原材料とならない生鮮食品としての表示をしなければなりません。 ただし、外食やインストア加工の食品については、現在、JAS法に基づく表示義務の対象とはなっておらず、今回の改正は、このことを変更するものではありません。 また、外食等向けのみに供給されることが確実な原材料(外食事業者に直接卸されるもの等)についても、表示義務の対象とはなりません。 しかしながら、販売先の使用用途が外食等向けのみかどうか不明な場合は、表示義務の対象となります。 なお、インストア加工業者であっても、食品を他の事業者へ販売し、それが表示を義務付けられる加工食品となる場合には、業務用加工食品としての表示が必要となります。 また、食品衛生法においては、容器・包装に入れて販売するものについては表示が必要ですが、JAS法においては、加工食品を販売店舗内において
には、表示の必要はありません。 これは、使用する原材料の種類が多岐に及ぶこと、提供される商品の種類が多く、かつ、その原材料が頻繁に変わることなどから表示することに難しい面がある一方で、消費者の求めに応じて店内にいる従業員等がその商品の内容について説明できること等により、消費者に商品に関する情報が正確に伝わるからです。
食品衛生法は、容器・包装に入っているものを表示義務の対象としており、表示場所も原則として容器・包装に限定していることから、タンクローリーやコンテナ等の通い容器(食品衛生法では容器・包装とされていないもの)は対象外とされています。 しかしながら、JAS法においては、最終製品における表示の正確性を確保するため、タンクローリーやコンテナ等の通い容器についても表示義務の対象とします。ただし、通い容器に関する全ての義務表示事項は、容器・包装に限らず、送り状、納品書等又は規格書等に表示することも認めることにしています。
加工や包装等の工程の一部を他社へ委託する場合(契約上の請負となっている場合を含む)も、委託先が不適正表示の原因となる行為をする可能性があることから、委託元と委託先との取引を表示義務の対象とします。
このことから、製品等も委託元で用意し、それを委託先に提供した上での
のような単純な委託行為であっても、委託先が不適正表示の原因となる行為をする可能性があることから表示義務の対象とします。 なお、例えば、
今回の改正により、製造等の行為を行うか否かにかかわらず、卸売業者(帳合業者を除く)は表示義務の対象となります。したがって、卸売業者は表示責任者となることから、義務表示事項についての情報を把握し、適切に伝達を行う必要があります。送り状、納品書等又は規格書等に表示されている場合は、その情報を伝達する必要があります。 なお、義務表示事項が全て容器・包装に既に記載されていれば、卸売業者は改めて表示を行う必要はありません。
販売元と販売先の合意に基づき規格書等を取り交わし、卸売業者を経て製品が取引される場合(帳合取引を除く)であっても、卸売業者は表示義務の対象となります。 この場合において、例えば、義務表示事項の全てが容器・包装に表示されていないものは、卸売業者は、製品と規格書等を照合できる情報を送り状、納品書等に記載して販売先に伝達すれば問題はなく、必ずしも卸売業者が規格書等を入手する必要はないと考えます。また、義務表示事項が全て容器・包装に既に記載されていれば、卸売業者は改めて表示を行う必要はありません。 輸入品は、輸入業者が国内で他の事業者へ販売する時点から表示が必要となります。したがって、輸出国側の事業者には、JAS法に基づく表示義務はありません。なお、輸入手続きの代行だけを行う事業者には、JAS法に基づく表示義務はありません。
輸入品についての表示は、輸入業者が国内で他の事業者へ販売する時点から義務表示事項については、邦文による表示が必要です。 これは、
等の理由によるものです。
業務用加工食品について、具体的に表示が義務付けられる事項は
しかしながら、名称、食品添加物、内容量、賞味期限(消費期限、保存)方法、製造業者等の名称・住所については、業者間取引であっても、既に食品衛生法や計量法により表示が義務付けられていますので、今回、新たに表示義務が生ずるのは、原材料名(食品添加物を除く)と一部の食品における原産国名、原料原産地名となるものと考えています。
業務用加工食品の表示は業者間取引では、容器・包装に限らず、送り状、納品書等又は規格書等に表示することができます。 なお、規格書等へ記載する場合には、容器・包装、送り状又は納品書等において、発送、納品された製品が、どの規格書等に基づいているのかを照合できるようにすることが必要です。 このように、今回の改正では、業務用加工食品の義務表示事項を、容器・包装に限らず送り状納品書等又は規格書等に表示することも認めていますが食品衛生法及び計量法で容器・包装に表示することを義務付けられている場合には、これらに従い表示しなければなりません。
今回の改正により業務用加工食品の義務表示事項となる「原材料名(食品添加物以外)」 の「原料原産地名(必要な場合)」 、「原産国名(必要な場合)」については、個装にこれらを表示している場合、ダンボール箱に改めて表示する必要はありません。また、ダンボール箱に表示をしている場合についても、個装に改めて表示する必要はありません。 また、名称、食品添加物、内容量(必要な場合、賞味期限(消費期限)及び保存方法(必要な場合、製造業者等の名称及び住所)については、食品衛生法及び計量法で指定された場所に表示する必要があり、これをJAS法で弾力化することはありません。 なお、ダンボール箱には表示してあるが、個装に表示されていない商品を業務用スーパーなどで一般消費者に販売する場合については、JAS法に基づく品質表示基準により個装(容器・包装)への表示が必要です。
加工食品品質表示基準においては、最終製品の「名称」は「その内容を表す一般的な名称を記載することと」されており業者間取引においても同様です。 しかしながら、容器・包装以外のタンクローリーやコンテナ等における運搬の際に、記号や略号による表示を行おうとする場合には、業者間で規格書等によりその記号や略号の意味が周知されており、かつ、行政による調査・検査の際に一般的名称との対応関係が明示できるようであれば、記号や略号による情報伝達も可能です。
また、しょうゆ、みそ等の個別の品質表示基準により定義と名称を定め、加工食品品質表示基準によりその定義に合致しないものに対し、その名称の使用を制限しているものについては、業者間取引においても同様の名称使用制限がかかることになります。
業者間取引における原材料名の表示については、最終製品に適切に表示するためには、必ずしも「多い順」に記載することが必要ではなく、例えば、原材料の配合割合を記載するなど「多い順が、わかる」ように情報を伝達すれば十分と考えています。ただし、何も説明書きもなく原材料名を記載する場合には、受け取る側は多い順に記述されていると通常認識することから、原材料を多い順に記載する必要があります。
また、原材料の配合割合は義務表示事項ではありません。ただし、中間原料の供給者は、最終製品の適正な表示に資する範囲内で、供給先の求めに応じ、原材料の情報を規格書等により正しく伝達する必要があることはいうまでもありません。
なお、食肉製品については、食品衛生法施行規則により、容器・包装に原料肉名を配合分量の多い順に記載することとされています。
全ての原材料名を記載することが基本になりますが、業者間取引を表示義務の対象とするのは、最終製品の表示の正確性を確保するための措置であることから、最終製品において表示されることとなる原材料名が表示されていればよいと考えています。 最終製品において、複合原材料(2種類以上の原材料からなる原材料)として使用され、最終製品の原材料名表示において、複合原材料名での表示がされる業務用加工食品については、食品添加物を除き、次のように記載することも可能です。
酒類(アルコール分1度以上の飲料)は、JAS法における農林物資ではありませんので、JAS法の対象とはなっておりません。酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律や食品衛生法に基づき表示してください。 アルコール分1度未満の飲料については、JAS法の対象ですので、業者間取引における表示義務の対象となります。 また、酒類を原材料の一部として使用した食品については、従来どおり、原材料に酒類の名称を表示してください。
最終製品で原料原産地名の表示が義務付けられているものは、輸入品以外のものであって、加工食品品質表示基準で義務付けられている、20食品群と、個別の品質表示基準で義務付けられているうなぎ加工品、かつお削りぶし、農産物漬物及び野菜冷凍食品があります。 これらの原材料となる業務用加工食品であって、最終製品で原料原産地名の表示が必要な原材料を含むものについて、原料原産地名を表示しなければなりません。 このような業務用加工食品としては、例えば、
があります。
上記に該当する業務用加工食品はもちろんですが、最終製品に原料原産地名の表示が必要かどうかがわからない場合など、最終製品において原料原産地名の表示が必要な原材料になる可能性を否定できない業務用加工食品についても、原料原産地名を表示しなければなりません。
JAS法に基づく加工食品品質表示基準では、最終製品が「輸入品」であるものには、原産国名の表示が義務付けられています。ここでいう「輸入品」とは、
輸入品である最終製品に適切に原産国名を表示するためには輸入品である最終製品となる業務用加工食品に原産国名を表示してあることが必要ですので、今回の改正により、そのような業務用加工食品には原産国名の表示を義務付けます。
業務用生鮮食品については、原則として名称と原産地を表示する義務がありますが、業務用生鮮食品となるかどうかわからないものについては、原産地の表示を省略することはできません。 JAS法上の生鮮食品に該当する一部の食品(容器・包装に入れられた、食肉、生かき、魚肉すり身、生食用鮮魚貝類、切り身又はむき身にした鮮魚貝類を凍結させたもの等)についても、 食品衛生法においては加工食品として、賞味期限、消費期限、保存方法、食品添加物等の表示も義務付けられていますのでご注意願います。 業務用生鮮食品の名称の表示は 「生鮮食品品質表示基準」において「名称」について「その内容を表す一般的な名称を記載すること」とされており、業者間取引においても同様です。 業務用生鮮食品の原産地の表示は加工食品の原料原産地名の表示の根拠となるものですから、業務用生鮮食品の原産地の表示方法は、加工食品の原料原産地名の表示方法と同様に、国産品であるものには「国産である旨」を、輸入品にあっては「原産国名」となります。 ただし、国産品にあっては、国産である旨の記載に代えて次に掲げる地名を記載することができます。
がわかるように記載します。
業務用生鮮食品については、「水産物品質表示基準」や「しいたけ品質表示基準」は適用されません。しかしながら、業務用生鮮食品についても、水産物品質表示基準やしいたけ品質表示基準に則した表示を行うことは可能です。
加工食品用の原料とされる業者間取引の米は、業務用生鮮食品ですので、生鮮食品品質表示基準に基づき表示を行う必要があります。 なお、玄米及び精米品質表示基準に即した表示は、生鮮食品品質表示基準に適合しているため、そのような表示をすることも可能です。 容器・包装に入れ一般消費者に販売する米の表示は、玄米及び精米品質表示基準が適用されますが、一般消費者用に包装する前の米であって業者間で取引される流通段階のものは、生鮮食品品質表示基準が適用されます(販売先が流通段階の荷姿(小分け等しない)で一般消費者に販売する場合は、玄米及び精米品質表示基準に基づく表示が必要となります)。
規格書等へ記載する場合には、当該規格書等の整理及び保存に努めなければなりません。どの商品に対応する規格書等なのかがすぐに照合できるように保存する必要があります。 このような規格書等は紙ではなく電子媒体で保存することも可能ですので保存スペースがない場合には、電子媒体で保存していただくことになります。 なお、当該規格書等を電子媒体で保存する場合には、印刷できる状態にしていただくことが必要です。
このような書類としては、例えば、
なお、中間加工品の原材料等の情報がその容器・包装のみに記載されている場合もありますが、使用済みの容器・包装を保存することは実態上困難であることから、このような場合には、いつでも仕入元に対し、使用した中間加工品の情報を確認できるよう、仕入元の連絡先が記載された送り状、納品書等又は規格書等の整理・保存に努める必要があります。
表示の根拠となる書類の保存期間は、取り扱う食品の流通や消費の実態等に応じ、自らの表示に対する立証責任を果たせるよう、合理的な保存期間を設定していただくこととなりますが、概ね3年を目安として保存していただくことが望ましいと考えています。
今回の改正により、製造業者等が義務表示事項を規格書等へ記載した場合、製造業者等に当該規格書等を取引相手以外の流通業者や消費者等へ開示する義務が生じることはありません。 農林水産省は、流通関係団体や消費者団体に対しても、このことを傘下の会員等へ周知、説明しています。
【参考:問い合わせ窓口一覧】 〈独立行政法人農林水産消費安全技術センター〉 札幌センター小樽事務所(小樽市)TEL 0134- 33- 5969 仙台センター(仙台市)TEL 022- 293- 3931 本部(さいたま市)TEL 048- 600- 2366 本部横浜事務所(横浜市)TEL 045- 201- 7433 名古屋センター(名古屋市)TEL 052- 232- 2029 神戸センター(神戸市)TEL 078- 331- 7663 神戸センター岡山事務所(岡山市)TEL 086- 222- 6923 福岡センター門司事務所(北九州市)TEL 093- 321- 2663 〈各地方農政局・沖縄総合事務局〉 ()()北海道農政事務所消費・安全部表示・規格課札幌市TEL 011- 642- 5490 代 ()()東北農政局消費・安全部表示・規格課仙台市TEL 022- 263- 1111 代 ()()関東農政局消費・安全部表示・規格課さいたま市TEL 048- 600- 0600 代 ()()北陸農政局消費・安全部表示・規格課金沢市TEL 076- 263- 2161 代 ()()東海農政局消費・安全部表示・規格課名古屋市TEL 052- 201- 7271 代 ()()近畿農政局消費・安全部表示・規格課京都市TEL 075- 451- 9161 代 ()()中国四国農政局消費・安全部表示・規格課岡山市TEL 086- 224- 4511 代 ()()九州農政局消費・安全部表示・規格課熊本市TEL 096- 353- 3561 代 ()()沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課那覇市TEL 098- 866- 0156 代 〈農林水産省〉 消費・安全局表示・規格課TEL 03- 3502- 8111 (内線:4486,4487 ) 〈ホームページ〉 http://www.maff.go.jp/j/jas/index.html | ||